「もう恋はしない」と思っていた60代の日常
60代に入ったころ、私は心のどこかで「もう恋はしない」と決めていました。
仕事も一段落し、子どももいない一人暮らし。毎日は淡々と流れ、特別な出来事がなくても不満はありませんでした。
それなりに穏やかで、静かで、波風の立たない日々。
ただ、夜ひとりで食事を終えたあと、テレビを消した部屋に残る静けさが、少しだけ胸に残ることがありました。
「寂しい」というほどではないけれど、「この先もずっとこうなのかな」と考えてしまう瞬間。
60代の恋愛なんて、現実的じゃない。
今さら誰かを好きになるなんて、気恥ずかしい。
そうやって自分に言い聞かせながら、恋愛という言葉を心の棚の奥にしまい込んでいました。
出会いは突然、心が動いた瞬間
そんな私に訪れた変化は、本当に突然でした。
きっかけは何気ない日常の延長で、特別なイベントがあったわけでもありません。
ある日、軽い気持ちで登録した出会いの場で、彼とやり取りを始めました。
最初は「どうせ続かないだろう」と思っていたのに、文章のやり取りが不思議と心地よく、気づけば返事を待つ自分がいました。
派手な言葉はなく、若い頃のような情熱的なやり取りでもない。
それでも、相手の言葉がちゃんとこちらを向いていると感じられるやり取りに、心が少しずつ動いていったのです。
「こんな感覚、久しぶりだな」
そう思った瞬間、自分でも驚くほど胸が温かくなりました。

年齢があるからこその不安と戸惑い
心が動いた一方で、不安も一気に押し寄せてきました。
60代で恋愛をすることへの戸惑い。
周囲からどう思われるのか、自分自身が浮かれているように見えないか。
「この年齢で恋愛なんて、痛々しいと思われないだろうか」
「相手は本当に私を見ているのだろうか」
60代の恋愛には、若い頃にはなかった種類の不安がつきまといます。
体力の衰え、将来のこと、老後の生活。
楽しい気持ちのすぐ隣に、現実的な心配が並んでいました。
それでも、やり取りを重ねるたびに、少しずつ不安より安心が勝っていきました。
「無理をしなくていい」
「今のままの自分でいい」
そう思わせてくれる相手の存在が、心を支えてくれたのです。
周囲の目と、自分の気持ちのはざまで
誰にも言えない時間がしばらく続きました。
友人に話せば、心配されるかもしれない。
家族がいれば、なおさら説明が必要だったでしょう。
でも一番の葛藤は、周囲の目よりも「自分自身の気持ち」でした。
恋をしている自分を、どこかで否定してしまう気持ち。
「もう落ち着いた年齢なのに」
「今さら恋なんて」
そんな声が頭をよぎるたびに、心が揺れました。
それでも、彼と話している時間だけは、そうした迷いが静かに消えていくのです。
60代の恋愛は、不安と喜びが同時に存在します。
それを否定せずに受け入れることが、最初の一歩だったように思います。
それでも会いたいと思ってしまった理由
何度も迷いながら、それでも「会ってみたい」と思ったのは、理由があります。
それは、無理をしていない自分に気づいたから。
若い頃の恋は、相手に合わせることが多かった。
でも今回は違いました。
沈黙があっても落ち着く。
話さなくても気まずくない。
「この人となら、無理に若作りしなくていい」
そう思えたことが、大きかったのです。
実際に会ったとき、派手な感動はありませんでした。
でも、隣にいることが自然で、帰り道に心が穏やかだった。
その感覚が、私にとっては何よりの答えでした。
60代の恋が教えてくれた本当の安心感
60代の恋愛で感じたのは、「安心感」という言葉の重みです。
ドキドキよりも、落ち着き。
刺激よりも、信頼。
連絡が来なくても不安にならない。
相手の生活を尊重できる。
恋愛というより、人生の延長線にある関係。
それが、今の私にとっての恋でした。
「誰かと一緒にいること=依存」ではない。
そう教えてくれたのが、この恋だったのです。
若い頃とは違う、静かな喜び
若い頃の恋は、感情の波が大きかった。
嬉しいときは舞い上がり、少しのことで不安になる。
でも60代の恋は、静かです。
心が穏やかで、深呼吸できるような感覚。
「今日も一日、ちゃんと生きた」
そう思える日が増えました。
60代 恋愛 不安と喜びは、表裏一体。
それでも、この静かな喜びは、年齢を重ねたからこそ味わえるものだと思います。
恋をしたことで変わった毎日
恋をしたからといって、生活が劇的に変わったわけではありません。
でも、小さな変化は確かにありました。
服装に少し気を配るようになった。
姿勢を意識するようになった。
自分の写真をきちんと撮ろうと思えた。
必要に応じて、プロフィール写真を整えるサービスを利用したり、
安心して出会える場所を選んだり。
それらはすべて、「自分を大切にする行動」だったのだと思います。
恋は、相手のためだけでなく、自分のためでもある。
そう気づかせてくれました。
不安よりも大きかった「一緒にいる幸せ」
正直に言えば、不安がゼロになったわけではありません。
これから先のことを考えれば、迷いもあります。
それでも、
「一緒にいる時間が心地いい」
「この人となら、今を大切にできる」
その気持ちが、不安を上回ったのです。
60代 恋愛 不安と喜び。
その両方を抱えながら進むことが、間違いではないと、今は思えます。
同じ不安を抱える60代のあなたへ
もし今、
「この年齢で恋をしていいのだろうか」
「また傷つくのが怖い」
そう思っているなら、無理に答えを出さなくていいと思います。
恋は義務ではありません。
でも、禁止するものでもない。
60代の恋は、遅くありません。
静かで、穏やかで、自分を大切にできる形があります。
あなたの不安は、とても自然なものです。
そして、その先にある喜びも、決して特別な人だけのものではありません。
「今の自分でも、恋をしていい」
そう思えたとき、きっと世界は少しだけやさしく見えるはずです。