「もう一度、恋を信じてみた」――60代から始まる優しい物語

「もう恋なんてしない」と思っていた

60歳を過ぎたころ、私はすっかり“恋”という言葉から遠ざかっていました。
職場を退職し、長く続いた仕事の緊張感から解き放たれ、ようやく「自分の時間」を取り戻したはずなのに、心のどこかにぽっかりと空いた穴がありました。

朝、ゆっくりとコーヒーを淹れながらニュースを眺める。
穏やかな時間なのに、どこか物足りない。
「誰かと他愛もない話がしたいな」と思っても、そんな相手はもういない。
気づけば、そんな日々が何年も続いていたのです。

60代になると、恋は“遠い世界の出来事”のように感じてしまいます。
テレビで恋愛ドラマを見ても、「あんなこと、私にはもう関係ない」と笑っていた。
でも、本当は笑ってごまかしていただけなのかもしれません。
心の奥では、まだ誰かを想いたい気持ちが、静かに息をしていたのです。


予想もしなかった場所での出会い

ある日、友人から誘われて、地域のカルチャーセンターで行われる写真講座に参加しました。
カメラなんてほとんど触ったことがありませんでしたが、何か新しいことを始めたい気持ちがあったのです。

その講座で出会ったのが、「田村さん」でした。
彼は同じくらいの年齢で、少し寡黙だけれど優しい笑顔の人。
最初の印象は、「落ち着いた人だな」という程度。
でも、講座が終わったあと、何気なく一緒に歩いた帰り道の会話が、なぜか心に残りました。

「光って、不思議ですよね。見ようと思えば見えるけど、意識しなければただの明るさなんです。」

その一言が妙に印象的で、私はしばらくその言葉を思い返していました。
“恋”というより、“人として惹かれた”瞬間。
そのとき、何かが少しずつ、私の中で動き始めたのです。


少しずつ心がほどけていった

講座のあとも、時々お茶をするようになりました。
互いの過去や、好きな映画の話をしたり。
若いころのように心が浮き立つわけではないけれど、彼と話していると、心が穏やかに温まるのを感じました。

「かおりさん、写真撮るの上手になりましたね。」
「まだまだですよ。でも…ちょっと楽しくなってきました。」

そんな他愛もないやり取りの中に、久しぶりに“自分が誰かに見られている”感覚がありました。
恋とは、派手な花火ではなく、静かに胸に灯る小さな灯りなのかもしれません。


若い頃とは違う、穏やかなときめき

ある日、ふと思いました。
「私、今、恋をしているのかもしれない」と。

60代で恋をするなんて、少し照れくさい。
でも、心がほんの少し弾む朝があることが、こんなに嬉しいなんて。
恋は、年齢を超えて“生きる力”を与えてくれるものなんですね。

若いころのような勢いや情熱ではなく、“相手の存在を心の中で静かに感じている”だけで満たされる。
それが、熟年の恋の美しさなのだと思います。

「この歳で恋?」――そう笑う自分がいる。
でも、その笑みの奥には、少しの誇らしさもありました。


「もう一度恋をしてもいいのか」という迷い

もちろん、不安もありました。
家族や友人に話したら、どう思われるだろう。
「今さら恋?」「危ないわよ」なんて言われるかもしれない。

年齢を重ねると、“守るべき体面”や“世間の目”が、恋の前に立ちはだかります。
でも、心はそんな理屈では動かせません。
どれだけ理性的に抑えようとしても、誰かを想う気持ちは止められないのです。

そんなとき、私はマリッシュというマッチングサービスのことを知りました。
再婚や熟年層の利用者が多く、落ち着いた雰囲気があるという口コミに惹かれて、そっと登録してみたのです。
プロフィールを書く手が少し震えました。
でも、どこか懐かしい感覚でもありました。
「誰かに自分を知ってもらいたい」と思うこと自体、心がまだ生きている証拠だから。


新しい自分に出会うということ

プロフィール写真を撮るために、思い切ってPhotojoy(フォトジョイ)を利用しました。
最初は恥ずかしかったけれど、カメラマンの方が優しく声をかけてくれて、自然な笑顔が引き出されました。
撮影を終えたとき、写真に写る自分を見て思いました。
「まだ、こんな顔をして笑えるんだ。」

あの一枚の写真が、私の背中を押してくれました。
その夜、久しぶりに鏡の前で髪を整え、少し香水をつけました。
楽天で買ったお気に入りのフローラルの香り
恋をしている自分を、そっと受け入れた瞬間でした。


誰かと話すことで、心が動き出す

アプリを通じて、いくつかのメッセージを交わしました。
最初は緊張していたけれど、同年代の男性たちとの会話は想像以上に穏やかで誠実でした。
中でも、一人の男性とのやり取りが心に残りました。
彼もまた、「誰かともう一度、ゆっくり話がしたい」と言っていました。

その言葉に、私は胸が温かくなりました。
恋は、誰かに“ドキドキする”ことよりも、
“心がほっとする”瞬間にこそ、芽生えるのかもしれません。


恋を通して、自分を再発見する

彼との関係は、まだ恋人とは呼べないかもしれません。
でも、彼と出会ってから、私は少しずつ変わりました。
出かける前に服を選ぶ時間が楽しくなり、
鏡を見るたびに、心の中で小さく笑えるようになったのです。

恋をすると、自分を大切にしたくなる
それは若いころも今も変わらない真理だと思います。
年齢ではなく、心が柔らかくなれること。
それが恋をする準備であり、恋を続ける力なのだと感じます。


60代の恋は、人生のご褒美:

60代で恋をするなんて、若いころには想像もしませんでした。
でも今なら、言えます。
恋は終わらない。形を変えて、人生を彩っていく。

若いころの恋は、未来を探すもの。
でも、今の恋は“今を愛おしむもの”です。
誰かと心を通わせる時間は、まるでご褒美のよう。
人生の後半に訪れる“静かな幸福”だと思います。

もし今、恋に迷っている人がいたら――
どうか、心の声に耳を傾けてください。
恋は、年齢ではなく、心の温度で始まります。

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コメント

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